MANちゃんのアンサンブル講座 その3:ファルカシュ/17世紀のハンガリー古典舞曲集(木管五重奏版)

フェレンツ・ファルカシュ:17世紀のハンガリー古典舞曲集(木管五重奏版)

Ferenc Farkas:Early Hungarian Dance from the 17th century(1943) For Wind Quintet

出版:EDITIO MUSICA BUDAPEST(Z.14 056)

民族音楽と現代音楽の融合

ハンガリーの作曲家、フェレンツ・ファルカシュ(1905~2000)。
2005年には「ファルカシュ生誕100年祭」で盛り上がってたのは知ってた?えっ!?知らない? ま~、日本ではあまりクローズアップされなかったかな。マイナーな作曲家といえば、そうかもね。
でもMANは大好きな作曲家の1人。アンコンでもたまに登場するちょっと不思議なサウンドの「17世紀のハンガリー古典舞曲集」を紹介しよう。
フェレンツ・ファルカシュはバルトーク、コダーイと共に20世紀ハンガリーを代表する作曲家。ブタペスト音楽院で学んだ後、ローマでレスピーギ(ローマの噴水、松、祭り、で有名)に師事。1946~65年、ブタペスト音楽院で作曲科主任教授も務めている。
ハンガリーの民族音楽や5音音階(ジプシー音階)、また12音技法(調性を持たない20世紀の作曲法)を巧みにクラシックの伝統的作曲法の中に取り入れたファルカシュのサウンドは独特。他に類を見ない作風だ。
多作家で作品は実に700曲を超える。オペラ、バレエ曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲、ミサ曲、合唱曲、歌曲、はたまた映画音楽とジャンルは様々、多岐にわたる。 管楽器アンサンブルのためにも結構たくさん書いていて、どれもファルカシュ独特のサウンドで、ハンガリー音楽の香り漂う素敵な作品。
出版されているので数曲紹介しておこう。
・ Serenade for Wind Quintet(1951) Z.14 148
・ Lavottiana for Wind Quintet(1967) Z.13 665
・ Contrafacta Hungaria for 2Ob+2Cl+2Fg+2Hrn(1974) Z12 827
・ Scenes from Hungary for 4Cl(1980) Z.13 419
・ Mascarade for Ob,Cl,Fg(1983) Z.13 127
出版は全て EDITIO MUSICA BUDAPEST(EMB)

明るく、楽しく、踊りあかそう!!

この曲は17世紀当時、ハンガリーで流行した民族舞曲をもとに5つの楽章から構成されている。
ハンガリーの民族舞踊は数多くハンガリー各地にあるらしい。そのほとんどは庶民、村人の娯楽として存在しているようだ。
「17世紀のハンガリー古典舞曲集」の第5曲「ウグロシュ」は、村の結婚式で跳んだり、はねたり、「めでたい、さあ踊ろう!」というとても楽しい舞曲。
その他も親しみやすい旋律ばかり。演奏のポイントは、「明るく、楽しく、踊りあかそう!」だ。
でも、フィンガリングがちょっと難しいぞ。楽しく踊る前にゆっくり地道な練習が必要だね。

1:INTRADA(序曲)Allegro moderato 2/4拍子 4分音符=96(がベストかな)

「さあ、お集まりのみなさん。舞踏会のはじまり~!」ってな感じの冒頭部。
最初の16小節はファンファーレだ。次のmf-pは「いや~、お久しぶり。お元気でしたか?」とちょっとごあいさつ。
33小節からは子供がはしゃいで走り回ってる様子。ClとFlの32分音符がそれを表している。軽快にね。
D.Cして再びファンファーレ。

2:LASSU(ゆったりした踊り)Moderato,maestoso 2/4拍子 4分音符=72

ゆったり、優雅に、村の長老が踊ってる。
基本はレガート、テヌートだけど、テンポは淡々と。ベターっと引っぱったら踊れないぞ。

3:LAPOCKAS TANC(ラポカシュ舞曲)Allegro(quasi Scherzo) 3/4拍子 付点2分音符=72 4分音符=200

超の非常に速い3拍子のダンス。
ワルツよりずっと速い。後半のFlとFgのフィンガリングとタンギングは超絶技巧。要練習!

4:CHOREA(舞踏歌)Moderato 4/4拍子 4分音符=80

ここでちょっとひと息…。
踊り続けて疲れたから、みんなでコーラス、心と身体を落ち着かせよう。
レガートで美しく…。

5:UGROS(ウグロシュ・跳躍の踊り)2/4拍子 4分音符=152

「休憩終り!さあ踊ろう!!」と超速ダンスで激しく飛び跳ねる。これ、超高難度テクニックだ。
Obのフィンガリング(左E♭キーがポイント)、Flのダブルタンギングとフィンガリングのタイミング合わせは十分な練習時間をとって、確実に。
ラスト6小節は書いてないけどaccel.で可能な限り速くして、興奮状態で終わるとめちゃくちゃカッコイイぞ!

ここで指示したテンポ設定はあくまで1つの目安。技術レベルに応じて少しは変えてもOKだけど、あまり遅いと雰囲気を表現できないから、しっかりフィンガリング(音階練習も含)、タンギング(ダブルタンギング)を練習して上記のテンポで演奏することをおすすめする。
さあ!明るく、楽しく、踊りあかしてくれ!!

補足…

フェレンツ・ファルカシュ(Ferenc Farkas)の作品番号について質問メールがあったのでお答えします。
ある中学生から「楽譜にHob.-で作品番号があるはず」との問い合わせだけど、「Hob.」で始まる作品番号は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn)の作品だけに付けられる番号で「Hob.」は、オランダの音楽学者・アントニー・ヴァン・ホーボーケン(Anthony van Hoboken 1887~1983)が著した、「ヨーセフ・ハイドン作品目録」に従う作品番号のこと。
一般に「Hob.-」と略して記される。
というわけで、F.ファルカシュの作品にこの「Hob.」で始まる作品番号が付されることはないんだよ。
ちなみにフェレンツ・ファルカシュの作品には作品番号は付されてなく、作曲年が記されている。通しの作品番号はないんだね。
もし、F.ファルカシュのいろいろな作品を調べたかったら、下記のホームページを参照すると良い。
https://www.ferencfarkas.org/ フェレンツ・ファルカシュのオフィシャルサイトだ。 (英語、ハンガリー語、ドイツ語、フランス語、イタリア語で日本語はない)